第7章 前の会社
少し厚くできたドアを開くと、
ビクッと肩を振るわせて
俺の足元だけみて視線を伏せる。
(目を見れないってことは、余程だな…)
すべてに拒絶し、怯えている。
最初あった頃より、
ひどく殻を籠っているのが
見るからに伝わってくる。
「俺だ、湊。
近付いて話しを聞いてもいいか?」
「……、」
今の俺との費やした距離感を試す。
どこまで拒絶するか。
話したくないのなら首を振る。
頼りたいなら首を縦に振る。
少し時間は掛かったが、
伏せた顔のまま頷いてくれる。
テーブルを挟んで聞くのは
取り調べや拷問と同類。
俺は席を開けないで椅子に腰を下ろし、
適度に寄り添う距離で
横を向いたまま座ることを選んだ。