第7章 前の会社
時を同じくして前髪を切った湊は、
出会った時よりも表情も性格も明るくなった。
あれから湊は
ユウを指名して美容室に来たのだと
後々ユウから報告があった。
どうやら湊もユウを気に入ってくれたみたいで、
俺は大切な親友を褒められて
なんだか誇らしい気分にもなる。
「湊。この書類頼む」
「あ、はい。分かりました。
企画書の方、もう少しで終わります」
「分かった」
頑なに上下関係を意識していたが、
俺は角を湊と呼ぶようになった。
ユウも赤司もどいつもこいつも、
湊くん、湊さんと見せつけるように呼んでおり、
俺は強引に納得させる方法を思いついた。
それは何ともくだらない理由だが、
息子が「ゆうと」と呼ぶように
湊も「みなと」と語呂が似ているからと
周囲、というよりも俺自身を納得させたのだ。