第6章 嫁と息子
いうなら千恵美と喧嘩したことがない。
自分で言うのもなんだが、
俺は機嫌が悪くなると無口になるし、
平気でシカトするし、
ユウの家に逃げるし、
女との口喧嘩は正直言って面倒臭い。
ぐちぐちと女々しいし、
勝手に捏造するし、
被害妄想たらたらで
こっちの気が狂いそうになるからだ。
思い出しただけでも反吐が出る。
だから俺と長く付き合えてた女には
そういう奴がいなくて、
俺は俺のように好き勝手やっていた。
「ユウ…」
俺には甘えられる人間が一人しかいない。
それが親友のユウだ。
アイツは暗い過去を話してくれて、
最後は泣くんじゃなくて
笑える奴だってすげーって思った。
俺はなんにもしたつもりはないのに
ユウは
「声掛けてくれてありがとう」と言って、
ちゃらんぽらんだった俺の心を強く揺さぶった。
だから俺も何か話さなくちゃって、
自分のダサいところとか
人にいったら笑われそうなことを言ったりして、
気を引きたくて、
この関係を繋ぎ止めておきたくて、
ひたすらユウの優しさに甘えん坊していた。