第42章 モデル
アキとは初対面から話しやすかったが、やっぱりまだ竹ちゃんとの壁を感じてしまう。
「俺の前髪で遊ぶなっつーの」
「直毛なおすならワックスじゃないか?兄貴もそうやってるし」
「マジ?これどうにかなる?」
「種類までは知らないけど、ユウの雑誌で載ってなかったか?パーマかけるとかアイロンでなおす気がしたんだけど…」
話を振られてハッとする。
アキは本を読むスピードが異様に早い。
文字だけじゃなく、本当に読んでるのかと思ったけどあのスピードで記憶していたとは。
「竹ちゃんはガチガチに固めるスプレーと、後から再調整できるワックス、どっちの方がイメージ的に使いやすいかな?」
「再調整できるワックスの方が嬉しいけど、前に大ちゃんに弄ってもらったけど上手くできなかったし…。ユウは髪の毛は柔くていいな」
「あはは…。俺は逆にくせ毛特有の悩みがあるけどね。もしそれがハードワックスなら握り込むように馴染ませていくんだけど…」
「じゃあさ、明日持ってくるからやって見てくんね?」
「えっ…」
「口で言われるより見た方が早いし。ダメならダメで諦める。美容師さんに聞いても、イマイチ分かんなかったんだよなぁ…」
俺の説明不足のせいで実践することになってしまった。
他人の髪をいじったことがない。
どうしよう。
困った。
チラッと助け舟を送ろうとアキを見てしまった。
「いいんじゃないか?ダメだったら俺がサイヤ人にしてやる」
「いじられキャラじゃねぇかよ!!」
「最強のサイヤ人だぞ。応援団にサイヤ人」
「それ。いいなァ」
「応援団は良いのかよ」
「ハメハメハ―応援とかどうよ?面白そうじゃね?」
「あー…部長に案として伝えてみるか。竹ちゃん発案ですがどうでしょうかって」
「そこはアキの名前で売名しようぜ」
「俺の名前だせば何でも通ると思うな」
「モデルの写真撮った時も髪、弄られたりしたの?」
「ああ、もう色々。至り尽せりでビビったわ」
話しはまたアキの方へと戻って行く。
これは「やれ」じゃなく「シャイボーイ、頑張ってみろ」ってことなのかな。
竹ちゃんは悪い子じゃない。
ちょっと威圧的なだけでイイ子なのだ。