第1章 ~牛垣武明の場合~
終業時間も近くなり、
部下が仕事以外の話しをしているのが目に余る。
「牛垣主任。主任もどうっスか?」
部下と目が合って矛先を向けられる。
予想は付いていたが、
どうやら飲みに行く話しをしていたと
ジェスチャーで示された。
「家で夕食作って
待っている嫁がいるからな。
俺を呼ぶときは前日にしてくれ」
そう。
俺は既婚者。
1歳年下の嫁と、
子どもは息子が1人いる。
「いつ聞いてもラブラブっスね~。
お子さん、いくつになりましたか?」
「今年で6つだ。
この前、俺の似顔絵を描いてくれたんだ」
息子の成長は大変目覚ましい。
あんなに小さかった赤ん坊が
絵だけでなく、
字も書けるようになったのだ。