第42章 モデル
部活動も本格的にはじまって、アルバイトでお小遣い稼ぎをしたい俺は求人誌を捲っていくもこの頭髪じゃ常識的に考えて接客業は難しい。
何気なく調理という文字を見てふと思いつく。
「家でもちゃんと料理してみようかな」
男二人で不健康な食生活。
父は料理がまったくできない訳ではないが、仕事の関係もあって出来合いのものやコンビニ弁当、カップ麺が我が家の主食だ。
便利な食品に助けられ、食べることに関しては全く困っていなかったため台所に立つことは皆無。
今は若いから血液検査にも引っ掛からないが、このままの食生活を続けていて良いのだろうか。
台所に立つ前にパソコンで一通り調べる。
見ていたら自分ひとりでも出来そうな気もしてくる。
食費と労力はカップ麺よりも倍は掛かるけど、父には健康的であってほしい。
魚は扱いにくそうだったので肉を食べやすいように切って、野菜も切って、炒めて、調味料を入れて全体に絡ませながら炒める。
帰ってきた父から上々な誉め言葉をもらうと更にやる気が沸いた。
包丁と向き合うにはまだ時間を要しそうだが、ファッション以外にも料理の趣味も増えそうだと思った瞬間だった。
* * *
「初日の体育ですが、しっかりラジオ体操から始めたいと思います」
「「「 ええーっ 」」」
「健康診断終わったら本格的な授業すっから。全員…起立ッ!」
たしかに小中学生の時もいきなり激しい運動はしてなかった気がする。
ラジオ体操や集団行動ではキビキビと体を動かし、音に合わせ、号令に合わせて移動する。
気を付け、休め、腰を下ろして休む姿勢、右へならえ、右向け右、まわれ右、足踏みなど基本姿勢を正し、勢いのある声を出す。
「全員…起立ッ!」
「「「 ハイッ! 」」」
一糸乱れぬ牛垣くんの影響なのか、周囲も影響されて、自衛隊員のように勢いのある声に変化していく。
こういう時、恥ずかしがったり、誰かがふざけたり、一人だけ貫いて真面目にやることは逆に浮世離れした雰囲気になるがアキの影響力はホントすごい。
その甲斐あって複数受け持っている先生から一番できていると感心された。
1年1組の団結力は最高。
クラス全体を褒められた気がして嬉しかった。