第39章 フラット *
事後、家に帰ることを諭すとその日のうちに帰ってしまった。
でも、不思議と寂しくはなかった。
主任が優しいキスを残してくれたから。
行動力のある主任はケリをつけに行ったのだ。
止める理由などない。
────
──…それから俺は会社を辞めた。
主任は少し誤解していたようだが俺が会社を辞めた理由をちゃんと納得してくれた。
長瀬のように二の舞を踏みたくない。
主任は長瀬のような奴ではないと分かっていても、主任は常に注目されている人種だ。
鋭い人なら空気で伝わってしまうこともあるため、退職して気持ち的にはとてもスッキリしている。
「湊。これがそうだ。CAに滞在していた時の写真。ネットにあげたのはほんのごく一部だがな」
「うわぁ…!こんなに」
そして俺は今、はじめて主任の住むマンションにお邪魔していた。
「ここに座れ。ゆっくり見ていいからな。あとはコレだな。見終わったらディスクをココで入れ替えられる」
「それはなんですか?」
「新婚旅行でCA行った時の写真。前に元嫁の写真みせたろ?それ以外に赤司が撮ってくれてその時にオルフェとミックも呼んだんだ。ケンジの親友役で登場してたチェイス・ヒューレット。覚えてるか?」
「はい。チェイスの役者さんも格好良いですよね。この方もアメリカ人ですか?」
「イングランド出身。芸名がミカエル・ビアス。本名がジェフリー・ミカエル・ビアス。小さい頃からミックと呼ばれてたらしいからミカエルの名前で活動しているそうだ。
オルフェは本名公開してないが大して変わらん。芸名がオルフェ・オーブリー。本名がオルフェルト・オーブリーだ」
「日本人だからなのか意外というか、不思議な感じがします。アキさんの芸名の由来って聞いてもいいですか?」
「まあ大した理由ではないんだが…」