第37章 惑溺
「なんか驕っちゃってもらってすみません!今度なんかお礼しますねっ!」
店の前を出ると赤司くんはペコッとお礼をする。
「俺も楽しい話が出来て良かった。俺が謝るべきじゃないんだけど長瀬のこと、本当にごめんね」
「謝るべきじゃないと思うんなら謝んないでほしい。俺もムシャクシャしてたから当たっちゃったことは謝る。ごめんなさい。アンタに向かって死ねとか、大人げないこと言ったのは反省してるけどあいつが腹の底まで憎いのは変わんねぇ。でも、アンタのことは嫌いじゃないから」
「俺も安易な発言をして君を傷付けたのは反省してる。赤司くんの聴取はまだ続いてるの?」
「いや、俺も武明も済んでる。あいつは平然として会社行ってるけど早く終わらせて、一刻も早く忘れたいんだと思う。あとは法廷待ちってところ」
「そうか…」
「来たい?」
俺が少し沈んだ声を出すと赤司くんは勘違いしたようだ。
法廷の場に顔を出すことにある長瀬。
牛垣主任はどうするのだろうと考えただけだが、長瀬に一目会いたいと思わせたのかもしれない。
「結果は知りたい気もするけど会いたくはないかな。これ以上、相手のことも自分のことも嫌いになりたくないから」
「分かった。湊さん番号交換しよ?ビーチ写真もそうだけど武明の顔好きだろ?今度、俺のアトリエみせてやるよ」
「主任のこと性格を含めて尊敬してるんだけどなぁ…」
顔だけ顔だけと赤司くんは言っているが、主任が傷付いて本気で怒るくらい好いているんだと思ったり。
携帯番号を交換し終え、少しだけ期待して別れたのであった。