第5章 髪
ユウにはまだ話しちゃいないが、
角はバランスが整った顔をしているし、
イケメンの類だから
喜んで引き受けてくれるだろう。
「主任はいつも、
そこで切ってもらっているんですか?」
「ああ、ユウの店
ってわけじゃないけどな。
美容学校を20歳で卒業して、
アシスタントで下積み詰んで、
22歳頃からスタイリストになって…、
何事にも丁寧で上手だよ。アイツは」
ユウの頑張りを近くで見てきたから知っている。
苦悩することもあったけれど、
なにより楽しそうに働いている姿が思い浮かぶ。
俺がそういうと角は少し考えて、
「お願いします」とペコっと頭を下げた。
──…
今日は、
ユウの家で宅飲みすることになった。
おつまみはユウが作ってくれるから、
俺は専門店に寄って酒を調達する。
家には帰らないと前日に連絡済。
重たい紙袋を持ってユウのマンション前に到着。
インターフォンを鳴らすと
変わらぬ温かな笑顔で出迎えてくれた。