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【R18】Querer【創作BL】

第33章 𝐋‌𝐎‌𝐂‌𝐔‌𝐒 *





姿勢を低くして状況下を探る。

頭から血を流した囚人が
こちらに向かって歩いてくる。

しかし無残にも
後ろから銃撃を浴びて
頭から倒れて行った。





「ケンジ。
死にたくないなら全力で走れ」


「言う通りにするッ」





煙が舞う中でみえてきた人影。
犯人が分かると思ったが
セドリックに呼び掛けられる。

ケンジは強く頷くと
セドリックの背中を追いかけて廊下を走り、
貯蔵庫の方へ足を向けた。





「リプソン! どうなってるッ」


「トレイシー。
マスターキーを寄こせ。
奴を仕留める」


「分かった。俺は引かせてもらうぞ」


「こいつも安全な場所へ頼む。
大人しい模範囚だ」


「セドリック。お前……」





トレイシーは腰に下げていた
鍵をひとつ
囚人であるセドリックに手渡す。



これは何を意味するのか。





「──…ケンジ」


「行くな。
お前なしじゃ生きていけない…っ」





一人で立ち向かおうとする。

このままでは
永遠に逢えなくなってしまう。



綺麗な青い瞳が最後に覗き込む。





「お前も一緒に連れていきたいよ」





額を擦り合わせて薄く微笑んだ。

まるで死んで行くみたいに
笑いやがった。





ケンジは離れていく瞬間に
かすめる程度の口付けを押し付けた。





「お前の幸せを、心から願っている……」





ケンジは溢れそうな涙を堪えた。
最後に泣いた顔を見せたくなかった。

セドリックの前では
泣いてばかりだったから。



戦場に向かっていく奴を
笑顔で送り出して、
どうか生きていてほしいと願いを込めて。


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