第5章 髪
肉料理が美味い店に入り、
この店に来たのは初めてだと話す。
「上司相手じゃ緊張するか?」
テーブルの向かい席に座っている角は、
落ち着ける店内だというのに
緊張した面持ち。
肩が見るからに強張っている。
「肩貸して家の中歩いて、
飯作って食べさせて、
汗掻いたから着替えさせて、
無防備な寝顔だって見たのに…
今更、
二人きりで気を引き締めることが必要か?」
「そ…れは…」
「全部俺が勝手にしたことだけどな。
ランチタイムなんだからリラックスして過ごせ。
そんなんじゃ、
俺も意識して気を緩められないだろ?」
「……、」
俺の意図が伝わったのか、
少しずつ肩の力が抜けているようだった。