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【R18】Querer【創作BL】

第30章 注目の的





目の前に見惚れるほどの男が現れても、
俺の胸は
やっぱりまだ長瀬が占めている。





(長瀬は今頃どうしてるんだろ…)





俺がいなくなって
新しい女の恋人を作っただろうか。

それとも
長瀬の父が口にしていたように
ナイトクラブに行って、
両手に女の腰でも抱えているのだろうか。






「っ…」





どっちにしろ
そんな長瀬を見たくない。



俺を好きだといってくれた唇で

俺を真剣に見つめてくれた瞳で

俺を熱く抱いてくれたその腕で



たった一夜の関係でも、
長瀬に触れてほしくはない。










「…どうした、角。
酔いが回ったか?」





熱い湯のみを持って
ぼんやり考えごとしていると、
心配そうに鹿又が覗き込んできた。





「あ……すみません。
二次会へは…ちょっと…」


「分かった。そう伝えておく。
俺もこの辺にして置こうかな。

それにしても角は
ひと口めで赤くなるなんて
実は無理したんじゃないのか?」


「いえ…。
もともと赤くなりやすいだけなんで」



「そうなのか…。

俺は主任がはじめてやって来たとき、
実力でこそ仕事では勝てないと
早々に見せつけられた。
実際に主任のコンサルで全体業績もアップしたしな。
あの人は顔だけじゃなく
実力もあって何より器用だった。
だったら他で勝とうと思って、
自我で認めるほど酒が強い方だと思ってたから
牛垣主任とサシで飲んだことがあったんだ。
あの涼し気な表情を蕩けさせてみたくてな。

そしたら主任は顔色一つ変えず
飲み続けるもんだから
俺はムキになって。
いい年して思いっきりヘマしちまったよ」





どうやら鹿又は着任当初、
新しい上司となる年下の
牛垣主任のことを快く思ってなかった。

だが遠く見つめる横顔からは
アルコールの効果も少しはあるのか、
信頼を含んだ温かなものを感じられる。





「…鹿又さんみたいな方が近くいて、
主任も心強かったと思いますよ」


「ああ。ありがと」





敵が味方になると心強い
というのは
まさに、このことなんだろう。


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