第3章 高熱
嫁の千恵美には、
「遅くなる」としか送っていない。
部下がどうとか、
仕事がどうのとか、
口出しされたくないから話もしない。
「……、ん」
「?あぁ、起きたか…。
飲みもの飲むか?」
「…え…、あぁ…、はい…」
動いた音が聞こえて振り向くと、
角は虚ろな目で身体を起こそうとしていた。
買って冷やしておいた
スポーツドリンクを持ってきて、
身体を支えて飲ませてやる。
「だいぶ顔色良くなったな。
身体の熱も、
引いてきてる気がする」
廊下で倒れていた時の背中。
今は汗で湿っているが、
楽になったようにも思える。
「飯…食った、おかげです、
ありがとう…ございました…」
「ああ」
水分補給も終わり、
汗が冷える前に着替えさせた。