第1章 ~牛垣武明の場合~
久々に話したくなって、
夜、会えないかと連絡する。
「ユウ。久しぶり」
「久しぶりじゃないでしょ。おつかれ~」
行きつけの居酒屋。
耳触りのよい賑やかさ。
客層もそこそこ品があり、
落ち着いて美味い酒が飲める店だ。
席に座る前にビールジョッキを頼み、
向かい合わせの席に腰を下ろした。
「あ~疲れた。7日振りか?」
「正しくは6日振り」
先に店に来ていたのは、
高校からのマブダチ、槍木祐次郎。同い年。
金髪に染めた髪は肩幅までつく長さ。
最近は束ねることが多い。
また揃えた顎ヒゲを生やしており、
垂れ目で物腰柔らかな穏やかな口調。
見た目からいかにも優しそうって奴。
「よく覚えてんな」
「あの日はたまたま俺も忙しかったからね〜」
少し皮肉に言われたが、
俺が呼んだら必ず場所を設けてくれる。
中身も裏切らないホント良い奴。
冷えたビールも届いて、ジョッキを鳴らした。