第24章 初デート

橋爪先生に恋人がいることは
ほかの生徒たちが
話していたのを聞いていたので知っていた。



2月14日…
普通ならその恋人と過ごす日なのに。










「あー…待たせたね。
もう少し早く出れば良かったんだけど
電車トラブルに遭ってしまって…」


「いえ。俺もいま来たところです」





先生とその恋人は何かあったのだろうか。
でもそんなの俺には関係ない。

先生はノンケだから勝負に値しない。

事情が事情だから
先生は他の生徒より
俺のことをほんの少し気遣ってくれてるだけ。



なにも期待なんかしていない。





「今日はなんの映画を見るんですか？」



「今日から上映されるのなんだけどね。
被害者遺族の復讐物語りっていうのかな。
R15のやつで。
もちろん、15歳に達しているなら
中学生3年生でも入場可能なんだけど。

そういうの苦手？」



「…もしかして、
家族を殺された男の子が
加害者だけでなく、
その一家全員を報復しようっていう…。

ニュースで告知もしていたから
その内容にゾッとした記憶があります」



「そうそれ！
僕はホラーとか
殺し合いモノが特に好きなんだけど
復讐モノも好きでね。

彼女は主演の大ファンで
この前まで一緒に行こうって
約束してたんだけど、
突然、大号泣するから行きたくないって
駄々こねちゃって。

それでちょっと揉めちゃって…」



「普通それ、映画館行く前に
仲直りしないんですか…？」



「んー…まあ、そうなんだけどね」





曖昧な顔をする先生。

恋人のことはこれ以上深入りせず、
映画館に足を運ぶことにしたのだった。