第20章 ~角湊の場合~
長瀬は冗談だってと
笑いながら口にしており、
冷や汗が引いていく。
コイツは理解がある奴なのか?
それとも単純にノリで生きてる奴なのか。
どちらにせよ、
こっち側の人間じゃないのは分かってる。
「湊はどういう子がタイプなの?
キレイめな子?
それともカワイイ系の子?」
「知るか。
好きになった奴がタイプだ」
「お~、答えてくれた!
なるほどね。
なら今度合コンやろうぜ!
湊も誘ったら面白いんじゃないかって
他の奴も言っててさ~」
俺が顔を出したって
何も盛り上がらないだろう。
場を氷りつけるだけだ。
それなのに長瀬は俺に積極的に
話しかけてくる。
(知りたくなんてないのに…
なんでこう耳に入ってくるんだ…っ…)
長瀬の恋愛対象は異性なのに
分り切ってることなのに
それとは裏腹に
期待してしまう自分がいる。
親しくされれば情が移るように
取り繕ってきた気持ちが
甘くほろ苦く溶けていきそうになる。
許しちゃいけないのに
麻薬みたいに
欲しくなってしまうんだ。