第12章 知らせ
今日も仕事がある。
朝帰りしたら千恵美に心配された。
濡れたまま寝たがタフな体は
熱をこじらせることもなく、
顔をみて大げさに手当て
してくれそうになったが、
目立ちたくなくてコンシーラーで痣を隠した。
「顔面一発で済んだのが幸いか…。
俺も一発、ぶん殴りたかった」
刑務所に入るまで長瀬の顔面を殴ってやりたい。
こうガツンと。
この際だから頭突きでもいい。
刑事にお願いしたらできないだろうか。
爪で痕付けたくらいじゃ気が治まらない。
「はぁ~…」
会社に行くのがこんなに気が重くなるだなんて、
初めてのことだ。
あの後、
ホテルは一人退出できなかったから
湊とはベッドで背中合わせで寝た。
ソファーで寝るなって
一言だけ呼びかけたら行かないでいてくれた。
チェックアウトする時は一言二言だけ喋った。
「はぁぁ~…」
会社で面倒なことを話すよりも
湊のことが心配だ。
自分の気持ちにようやく気付いたが
ヤッチマッタ。
「やばいこれマジ泣きそう」
精神的ダメージはこっちの方が上。
この弱音はたぶん、
身体の隅っこに薬が残っているせいだろう。