第1章 ~牛垣武明の場合~
佑都の成長をみて、
そろそろ具体的に
考えてみてもいい時期だろう。
「予算は前に話した通りだ。
間取りや契約先は決めたのか?」
「間取りはもう大体決まっているわ。
…でもちゃんと、
武明と話し合って決めたいもの」
マイホームを決めるのも簡単じゃない。
一度目を通してみたらやることが多く、
なんせ、
住みたい家というイメージが俺にはなかった。
「契約会社か…。
土地のこともも考えて、
後日資料を集めてくる」
「ありがと!頼りになるわ」
飛び跳ねたような声を出されるが、
こっちは仕事以外の仕事が増えて気が重い。
ずっと住みたい家。
帰りたい家。
居心地のよい家。
当たり前のように
明かりのついた家があるけれど
俺にとっては、
それ以上もなく
それ以外でもなかった。