第4章 揺らして
リストランテを出てしばらく歩くと大きなショッピングモールがあって、そこで見ることになった。
「男の人は何を貰うと嬉しいの?」
「んー、そうですね・・・定番なものだと財布とかキーケースとかでしょうか?」
財布、キーケース・・・確かにありかも。
あ、ここ良さそう、と何気に入ったお店がすごく煌びやかで、少しワクワクする。
「これ可愛い!あ、これも!でも、あんまりブチャラティっぽくはないかな・・・?」
思わず興奮してフーゴに話しかけると、呆れたようにため息をついていた。
「これとかどうかな?ブチャラティに似合いそうじゃない?」
キラキラ光るガラスケースの中に入ったキーケースを指さしてフーゴに問うけれど、
「ああ。」とだけしか返事してくれない。
いつもなら少し微笑んで暖かい返事をしてくれるはずなのに。
フーゴ?どうしたの?と聞いても、何でもないと言い張って相変わらずいつもより少し冷たく感じた。
私がまた1人でフーゴを振り回したから、嫌気を指したんだ。
馬鹿だなあ、私、興奮すると周りが見えなくなって。大人しくしないと・・・。
「これにしようかな、きっと喜んでくれるはず・・・!渡すの楽しみだな、ブチャラティに早く会いたいな〜」
なんて独り言を呟きながら、上質な皮でできた高級感のある白いキーケースを購入した。少し高い買い物だったけれど、ブチャラティの喜ぶ顔の為なら全く痛い出費では無かった。
相変わらず隣を歩くフーゴは目を合わせてくれなくて、デートの為に塗った口紅ももう完全に落ちてしまっていた。
でも塗り直してもこっち見てくれないなら意味無いじゃん。
せっかく一緒に楽しく買い物できると思ったのに_。
フーゴに対しての気持ちがぐちゃぐちゃになって、悲しみだったり寂しさで怒りの感情までも湧き上がってきそうになった。
「ねえ、あのキーケースどうだった?ブチャラティっぽかったよね?」
お店から出た時に、改めて目を見て聞いてみた。もう視線を逃せられないように、その隙を見せないように。
「ああ、いいと思うよ。すごく」
その返事は、いつもの温もりなんてさらさらない冷たいものだった。
フーゴはきっとイライラしてる・・・私に。
そう確信した途端、嫌われたと察して心臓がぐんと重くなった。