第1章 落ちて
「わ、、、っ。
私が!浮気をしたのよ・・・それで・・・恨まれたのよ・・・きっと」
お願い、私をそんな目で見ないで・・・!
「私、クズなの!最低なの!だから私と関わらない方がいいわ、本当に・・・・・・」
「それは本当か?」
ぐっと顔を近づけて、私の目の向こう側を見るかのように見つめてくる。
「・・・本当よ、私に関わらないで」
ツ。
私の頬に冷や汗が伝った。
途端、彼は自らの幽波紋を発現させた。
「・・・・・・・ッ!?」
言葉にならない言葉が出る。彼の傍には青い、人型の、「悪霊」が現れたのだ!
「見えるんだな、ナマエ、君は幽波紋使いだね?」
声が出ない。この人の幽波紋も私のものと同じなの?
「やめて、お願い、私のことは放っておいて!
私はあいつらに殺されるべきだったの!」
「君は組織の人間だろう?」
そう言って彼は自身の頬を指して
「昨日まではわからなかったが今確信した。君は嘘をついている。君の汗が、それを教えてくれた。」
「私に関わるとあなたも狙われる・・・もう私は組織に関わるのは嫌なの・・・一生一人で、私を狙う奴らから逃げ回って生きるのよ・・・!」
「君を狙うのは同じ、組織のものなのか?俺たちの組織内で問題が?」
「違う!私の・・・私だけの問題なの!ブチャラティ、組織にはきっと私のことを知らない人だって沢山いると思う。だからお願い、誰にも私のことは言わないで。私はもう組織の人間じゃないの!」
気づけば私は興奮していて、敬語までも失っていた。
これ以上私を守ってくれていた人が、私のせいで殺されるのは見たくない。
身勝手だとはわかっているけど、それがあなたのためでもあるんだから。
「前に・・・当時の幹部に君の話を聞いたよ。君の言う通り、今の組織で君のことを知るのは恐らく数名・・・。」
「私は・・・っ私は」
“もう死んだよ”
あの男が言った言葉がフラッシュバックする。
本当に兄さんは死んじゃったの? 私が撃たれたときに家に向かえばよかった・・・。そしたらきっと兄さんは明るく私を迎え入れてくれて、ブチャラティに出会うことだってなかった・・・。
「君は麻薬のルートを知る重要な人物なんだ。それに今もし君が組織から抜けると敵はもっと増える。君が俺たちに協力してくれると、組織は君を守れるんだ。」