第8章 誰も知らない
きょうはずっといろんなこえがする
いろんなおとがする
なんだろう、
まあいいか。
リアはベッドの傍にある花を眺め、先程来た誰かのことを考えていた。
リアの記憶は、たとえ今何かを経験したとしても、夜には何一つ覚えていないところまできていた。
だから一週間毎日リヴァイが訪れ、小さな花を一輪ビンに差して行くことも知らない。
さっききたのはだれだろう。
たしかその前にも誰か来て私に何か話していた。
…みんな悲しい顔をしていた。
どうして?
わからない。
周りを見渡す。
今自分がどこにいるのかさえわからない。
今見えている物も、聞こえている音も本当にあるのだろうか。
わからないことばかりで、実は自分自身も本当はいないのではないだろうか。
考えていくほどに頭の中には疑問と不安がどんどん溜まる。
そして気づいた時には、今何を考えていたのか思い出せなくなる。
ははは。
笑っちゃう。
何も思い出せないはずなのに、モヤモヤだけが残って積もる。
何もわからないはずなのに、そんな自分がとても嫌になる。
くるしい。しんどいよ。
ああ、からっぽね。
1人でぽつりと呟くと、
「ほんとにね」と頭の中で声がした気がした。