第8章 誰も知らない
調査出発前
観衆がそれぞれに調査兵団の皮肉や歓声をあげる中、調査兵団は張り詰めた緊張感の中、馬に乗って門の前に集っていた。
恐怖ですでに震えている者、功績をあげると意気込んでいる者、探究心に心躍らせる者、残す家族を思い涙する者。
リヴァイは空を見上げた後、ただ一転を見つめていた。
「兵長?どうかしましたか?」
「ペトラか。いや、なんでもない。」
ペトラ・ラル。
彼女はリヴァイ率いる特別作戦班の一員だ。リヴァイからの信頼も、リヴァイへの忠誠も厚い。
しかしそんな彼女すら知らない。
リヴァイが見つめる先に兵舎があることも。
そこにいる誰を思っているのかも。
それぞれに思いを持ち、
彼らは人類を守るために危険な外へと向かう。
これからいつ、何が起きるかなんて誰も知らない。
誰にもわからない。
未来を知ることなど、神にしか出来ない領域。
だからこそ、自ら決断し歩んできた道をいつまでも振り返り後悔しても仕方がない。そこにこれからの答えなど何も無いからだ。
さあ、開門を知らせる合図が鳴り響いた。