第7章 空白と決意
数日後。それは本当に本当に、突然やってきた。
昨日と同じ日常の延長が来るはずだった。
その日、リアはいつものように窓の外を眺めていた。
空に浮かんでるあの白いものは何だろう。
初めて見るそれに手を伸ばしてみるが届かない。
次にエルヴィンが来てくれるのはいつだっけ……。
あれ。エルヴィンって誰だっけ。
あれ。私…。
誰だっけ。
リアの記憶が全て彼女から流れ出した瞬間、当たり前だったことはどんどん疑問に変わり、答えが見つかることの無い疑問は大きな不安と恐怖を与えた。
私は誰?
ここはどこ?
私が座っているこれは何?
私は誰を待っていたの?
なんでここにいるの?
体にまとわりつくこの布は何?
わからない。わかんないよっ!!
イヤだイヤだイヤだ。
怖いよ…助けて…。
耳を塞いで泣き叫ぶ。
声にもならない悲鳴のような息が漏れる。
もう何も無い。空っぽの自分に。