第6章 飛翔
案の定両親の目が泳ぎだし、口が魚のようにパクパクと動く。
両親から目をエルヴィンさんに戻すと、再び目が合った。
エルヴィンは前屈みになり笑った。
「君が誰のもとでどんな人生を送ろうが君の自由だ。私には関係ない。だが生命を無駄に使うことは、先に逝った先人やこの平和を創り出す糧となった者達に対する愚弄だからね。」
リアが再び頷いて俯く。
両親は言葉の意味がわからず首をかしげていた。
「これまでいいことなんて少なかったかもしれない。
だからこそ君のその日常を、君が嫌いな世界を私に預けてくれないか。自分を認めてくれる、同じ志をもった者達と共に自由な世界で生きよう、リア。
君が君自身を嫌うならば、
私が君を大切にしよう。君が嫌う君の足に私がなろう。」
エルヴィンの横にいた兵士は言葉の意味を理解したのか、目を見開いてその様子を見ていたが、エルヴィンか目を逸らすことはなかった。
「…どうしてそんなに私の背中を押してくださるんですか。」
リアは俯いたまま顔を手で覆い呟く。
横では両親があたふたとしている。
「私は以前にも君を見たんだ。」
「…私は家から出たことはありません。」
「いや、家の中にいる君を見たんだ。」
リアは思わず顔を上げる。