第6章 飛翔
「3年前だ。私はロイ・フランケル氏の葬儀に出席していた。」
「お兄ちゃんの…」
「君のお兄さんは優秀な方だったようだね。私はその君のお兄さんが君と引き合わせてくれたのではないかと思っているんだ。」
リアの頭の中では次々とロイの優しい表情が思い浮かんでは消えていた。
「私はあの日葬儀場から君を見たんだ。虚空を見つめる姿がずっと目に焼きついて離れなかった。」
エルヴィンはリアの手を両手で包むと、故意にか顔を近づけ頬を緩める。
「…外はどんな感じですか。」
ぽつりと零れたようにつぶやいた。
「君にとって必ずしも自由とは言えないだろう。生きることには必ず縛りがあるからね。だが…扉を開けなければ見えない世界がある。扉を開けるかは君が選ぶことだよ。」
リアは少し考えると、車椅子を回して両親の前へ進んだ。
「お父様、お母様。今までお世話になりました。産んでくれたことだけは感謝してます。…どうかお元気で。」
そう言うとリアエルヴィンの方へと向きを変え、1番の笑顔で笑った。
「エルヴィン副隊長。よろしくお願いします。」
ようやく止まっていた時間が進み始めた気がした。