第6章 飛翔
「いや、それは君の本心ではないよ。私は君の心が知りたいんだ。」
全ての考えが停止する。
「私の…心?」
「君は自由になりたくないのか?君は自分の足で立ち上がる前から歩くことを諦めているよ。君は何が気に食わないんだい。
自分を認めない世間か?」
「うるさい…」
「自分を閉じ込める環境か?」
「違う」
「…自分を諦めた自分自身か?」
「私は…「何を言われていますの?」」
両親が部屋にもどって来て会話を遮る。
リアは慌てて涙を拭った。
私は今何を言おうとしていたんだ。
いつの間にか現実を受け入れてしまったのは、紛れもない自分自身じゃないか。
「エルヴィンさん。あなたは娘の結婚を進めるためにいらしたんでしょう。何のお話をされていますの?」
するとエルヴィンは肩で笑いだす。
「これは失礼。リアさんの美しさに魅せられつい饒舌になってしまいました。」
リアが顔を上げてエルヴィンの顔を見ると目が合った。
「しかしリアさんにそんなご趣味があるとは。フランケル氏はどう思っていらっしゃるのですか?」
……いつ私が趣味の話などしたのやら。このペテン師は。
リアは呆れつつも両親の顔を見る。私の趣味なんかこいつらが知るわけないじゃないか。