第6章 飛翔
廊下に出ると昔見たその場所に本や絵画を見つけ、変わらずそこにあることが嬉しくなる。
私室から出たのは何年ぶりだろうか。
その間に変わってしまったことも失ったものも多くある。
慣れない車椅子の制御に戸惑いつつゆっくり廊下を進むと、
客間から両親と知らない男性の笑い声が聞こえてきた。
さぁ、死に急ぎ集団の人間と私を買った変態の顔を拝んでやろう。
ドアの前で使用人の足が止まる。
「こちらがお客様とご主人、奥様がいらっしゃるお部屋です。」
それを聞き、リアは小さく深呼吸をするとノックした。
「失礼いたします。」
「入りなさい。」
扉が開き、部屋へと進む。
客間のソファには愛想笑いをする両親と軍服の格好をした男が2人いた。
「初めまして。リア・フランケルと申します。」
何年ぶりか忘れた笑顔をつくるため無理に口角を上げて話しかける。
すると金髪碧眼で背の高い男が立ち上がった。
「初めまして。調査兵団分隊長のエルヴィン・スミスです。今回の婚約の仲介をさせていただきます。」
すぐに気づいてしまった。
あぁ。この人も作り笑いだ。