第6章 飛翔
朝リアが目を冷ますと、椅子に綺麗なドレスが掛けられていた。
…最大限に見栄をはったのか、私には不釣り合いな豪華なドレス。
しばらくすると使用人が数名入ってきて、私は久しぶりに体を起こした。
そして、鏡に映る自分の体に呆然とした。
やせ細り、枝のような手足。痩けた頬。
その体に不釣り合いな鮮やかなマーメイドラインのドレスは大胆にも背中と胸元が開いており、とても親が娘に好んで着せるデザインではないだろう。しかしバストはぶかぶかで色気なんかない。
この縁談に賭ける両親の必死さがわかりやすくドレスに出ている。
痩せた体に無理やり着飾られたドレスは、食べ終わったチキンに申し訳なさそうに巻かれるマンシェットみたい。
もうリアは抗おうとも思わなかった。
それどころか自分の体にいくらの価値がつくのかと笑っていた。
どんな貴族だろうか。
あの腐った両親が探したのだからある程度は位があるのだろう。
そんなことを考えながら髪をまとめていると、使用人が車椅子を押してきた。
「そんな高価なもの…どうしたの。」
「旦那様が本日のためにお借りしてきたそうです。」
「そう…。」
内心どこまで見栄をはるのかと呆れていたが、どうやら部屋から出られるらしい。
調査兵の方はどんな方なのか。
自分は壁さえ見たことがないが、その壁の外はどうなっているのか。
知りたい。話がしたい。
全てを諦めたからこその好奇心か、
こんな気持ちは初めてだった。
使用人に押され、車椅子に乗って部屋を出た。