第3章 歯車
「おいっ、起きろ!」
その声に目を開けると、怒る秀吉と面白そうに笑う政宗。
「夢…じゃない……」
「あ?夢見てたのか?」
「くくっ、お前凄いなぁ。俺の馬上で寝るなんてよ」
むっとして睨みつけ、だいたい 連れてってなんて頼んでない と言おうとすると遮るように政宗が言う。
「ほら、着いたぞ」
「え?……うわぁ」
初めて見る安土城。現代では、その姿をこうして見ることはできない。 本当に戦国時代に来てしまったのだ、と思い知らされた瞬間だった。
城門の前には、先程本能寺で会った石田三成と見たことない男性がいた。
「よぉ、家康。お前が出迎えなんて、槍でも降るのか?」
「そんなんじゃないです。三成に無理矢理連れてこられただけ。」
不機嫌そうに言うこの男を家康と言ったか。
思わず じろじろと見ていると不愉快そうに
「なに」
と言われ、舞は焦る。
「えっ、いや…もしかして、徳川家康…様?」
それを聞いて、家康は目を丸くする。家康を弄っていた政宗も先程とは、違い刺すような目で見ていた。
(え、なに?)
「……あんた、なんで俺の名前知ってるの」
「え?家康って…徳川家康様以外にもいるの?」
「ぷっ!それもそうだ」
それを聞いて吹き出す政宗。家康は、はぁ とため息をつく。
(そんなことより…)
城門の前で多くの女性に囲まれて微笑む秀吉を呆然と見つめる舞。
その視線の先を辿り、納得したように頷く政宗が笑いながら言った。
「秀吉は、いつもあんな感じだ。安土一の人気者だからな」
あいつにあんな態度を取らせる女はお前くらいさ、とそれはもう楽しげに。
「え、あんた…秀吉さんに嫌われてるの?
ある意味凄いね」
と、家康が感心したように頷く。
「皆様、立ち話もなんですし…城へ入りましょう。 舞様と仰いましたね、安土城へようこそお越しくださいました。御館様がお待ちです。まずは、部屋にご案内しますね」
と微笑む三成。
舞は、戦国に来て初めて 優しい微笑みを見た気がして ほっと肩の力が抜けた。