第11章 時を越えて〜春日山城〜
ーーー宴会翌日の一乗谷城。
武田家への領地返還にあたっての細かい取り決め、織田・上杉・武田の正式な和睦の調印、毛利討伐へ向けての戦略会議が行われていた。
そこへ
「申し上げます!今川義元様より織田信長様へ火急の文をお持ちいたしました!」
春日山からの使者が慌てて駆け込んで来た。
「義元からだと?舞に何かあったのか!」
差出人を聞いた信長の語気が強くなる。
「舞様が高熱で倒れられーー」
「貸せっ」
「「「なんだって?!」」」
信長は使者が言い終わらないうちに書状を奪い取り、中身を検める。他の武将たちの顔色も変わった。
「家康、すぐに行け!」
読み終えるや否やそう告げる信長に
「御意」
家康も答え、すぐに動き出す。
「信長、見せろ」
謙信が言い、信長が書状を渡す。読み終えると書状を投げ出し
「帰るぞ」
そう言って謙信は立ち上がった。
「おい!謙信!」
慌てて信玄が止めるが、謙信は止まらない。あっという間に出て行ってしまった。投げ出された書状を拾い上げた信玄に
「なんて書いてあるんだ!」
政宗が焦って聞く。
「信長へ
舞が高熱を出して倒れた。薬師に診せても一向に良くならない。
薬師は『長旅の疲れが出た』と言うけど、それにしては熱が下がらないし意識もない。
このままだと、織田軍の帰還に合わせて帰るのは難しいから取り急ぎ文を書いた。
舞は春日山に来て二日目から急に様子がおかしくなった。佐助は『とらんく』の中身が原因じゃないかと言っているけど、それも定かではない。
経過はまた追って連絡する。 今川義元」
「「「……舞(様)…」」」
「謙信が不在では続きができぬ。続きは春日山に場所を移すより他あるまい。」
信長が言えば
「そうだな。」
信玄が答え、信長と信玄も春日山へ向かうこととなった。
「三成はともに来い。政宗は岐阜城へ行き、顕如軍を光秀と安土へ連れ帰れ。安土で毛利討伐へ向けての準備をしろ。秀吉へは文を出す。」
「「御意」」
「幸。悪いが甲斐のことを頼む。」
「はっ」
こうして、それぞれが動き出した。
その様子を見ていた朝倉景鏡。
(此の御方たちをこのように動かしてしまう姫様とはいったいどんな御方なのか…。姫様になにかあった時には……考えるだけでも恐ろしい。織田・上杉の逆鱗に触れたらどうなるか…。)
そう思い震え上がった。