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《イケメン戦国》時を越えて

第11章 時を越えて〜春日山城〜


ーーー同じ頃。
舞は義元とともに城下町へ向かって歩いていた。
「舞、どこに行こうか?」
義元が尋ねるも
「………」
返事がない。
「舞?舞?どうしたの?」
何度声を掛けても反応のない舞の顔の前で手をヒラヒラさせる。
「ーーっ!あっ。」
やっと気付いた様子の舞。
「どうしたの?ずっと呆けてたみたいだけど、何かあった?」
義元が心配そうに聞く。
「いえ、ボーッとしてただけでなんでもないです!ちょっと疲れが出ちゃったのかな?ははっ。」
義元は、赤い眼をしてらしくない作り笑顔の舞に違和感を覚えるも、敢えてそれには触れずにいつも通りの態度を崩さない。
「そう。それなら今日はやめとく?」
と問えば、
「…ごめんなさい。」
小さな声で舞は謝った。
「分かった。じゃあ、今日は城でゆっくり過ごそう。」
無言で肯く舞を連れてもと来た道を歩いた。


舞の様子がおかしいのには理由があった。
それは昨夜に遡る。

歓迎の宴が始まる前に佐助の居室を訪れ、トランクを受け取った。佐助が大事に扱ってくれていたのだろう、トランクはタイムスリップする前とさほど変わらない状態だった。
「佐助くん、ずっと大事に預かってくれててありがとう。」
そうお礼を言うと、自分が泊まらせてもらっている部屋にトランクを運んだ。

そして、宴が終わった後にトランクを開ける。
そこには、着替え、タオル、化粧道具、ドライヤーなと旅の必需品がぎゅうぎゅうに詰まっていた。

舞はその中から、封筒を取り出し、その中の書類に目を通す。

「そんなーーー」

そう一言呟いた後、舞は泣き出した。
涙が止まらなかった。

知りたかったけど、知りたくなかった。

言えないけど、伝えたい。

好きになりたくなかった、でも好きにならざるを得なかった。

帰りたくないけど、帰らなきゃいけない。

いろんなことをグルグル考えて一晩過ごした。

そして、朝日が昇る頃
「500年後に帰ろう。」
それだけを心に決めて目を閉じた。
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