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《イケメン戦国》時を越えて

第9章 時を越えて〜顕如討伐〜


〜三太郎目線〜
12になる頃、家族を亡くした自分は生きるためになんでもやった。
盗み、殺傷、身売り…明日も生きるためならなんでも良かった。
生きることに執着していたわけではない。でも、死にたいとも思わなかった。

血生臭く、人間のドロドロした部分を目の当たりにする日々を送ること数年。
そんな中で出会ったのが一人の青年だった。

追われるように各地を転々としていた俺は、美濃の国へと流れ着いた。
腹が減っても金も食料もない。
城下町でいつものように盗みを働く。
(今日も簡単だったな。)
そう思いながら、盗んだ戦利品を橋の袂で物色していたその時、

「貴様、名はなんという?」

突如声を掛けられた。驚いた俺が振り向くと、紅い瞳の男が立っていた。男と言っても、その姿からまだ元服して間もない子どもだと分かる。
「なんだお前は。あっちへ行け!」
そう言って追い払おうとするも
「名はなんと申すのだ?」
としつこく名を聞いてくる。
「斬られたくなければあっちへ行け。」
これが最後通牒だと告げれば、
「斬れるものなら斬ってみるがいい。」
と動じる様子もない。そのあまりにも堂々とし、ふんぞり返った偉そうな態度に毒気を抜かれた俺は
「三吉だ。」
と名を答えていた。

「三吉、俺の手足となる気はないか?」
「手足だと?」
なんの脈絡もなく、意味不明な会話を続ける男。
「俺は天下人となる男だ。この俺の手足となり、天下布武を成し遂げるその日まで俺に尽くせ。」
突拍子もない話だった。
「…お前、なに言ってんだ?」
呆気に取られる俺に
「やるのかやらんのか。どっちだ。」
強引に返事を求めてくる。

大阿保の言う夢物語だと思った。
相手にするのは大馬鹿者だとも思った。

でも

なぜか男の紅い瞳に魅せられた俺は

「分かった。やるよ。」

と答えていた。


俺の返事を聞いて
「ならば良し。」
男はニヤリと笑った。

それが、俺の生涯の主君、織田信長様との出会いだった。
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