第2章 時を越えて〜出会い〜
背を向けた私の視界に入って来たのは、慌てて駆け寄って来る1人の男性。
「信長様!!到着が遅くなり申し訳ございません。ご無事で何よりでございます!!!」
「三成か。大事ない。この女…舞が俺を救った。」
片膝を付き、頭を下げる男性に信長と呼ばれた男性がそう答え、2人同時に私を見る。
「そうでございましたか。舞様、信長様のお命を救っていただきありがとうございました。私は豊臣秀吉様の家臣の石田三成と申します。」
石田三成と名乗るアイドル顔負けの容姿ととろけるような笑みを浮かべた男性は、そう言って深々と頭を下げた。
と、そこで私の思考が一気に流れ始める。
(信長…石田三成に豊臣秀吉。どれも有名武将だよね?この人達は武将役の俳優って事?撮影にしてはカメラも他の機材も見当たらない。だいたい、ただの一般人の素人の私を巻き込んでそのまま撮影を続ける訳ないよね。この人達の目的はなに?)
考え込んで黙り込む私を不思議そうに見つめる石田三成。
「あのっ、舞様?どうされましたか?」
「ええっと、貴方は石田三成さんでこっちの方は信長さん?信長って織田信長のことですか?」
彼の言葉で我に返り、浮かんだ疑問をそのまま口にした私は
「ええ、その通りです。ですが、舞様。信長様を呼び捨てにするなど無礼極まりない。今後は『信長様』とお呼びください。」
笑みが消え、殺気を纏った表情の石田三成に厳しい口調で注意された。
なんだか良く分からないけど、恐怖を覚えた私は素直に肯き、
「そっ、それで信長様たちはここで何を?どうしてそんな格好をしてるんですか?撮影でもないようですが…。それに、ここはどこですか?
私は本能寺跡地にいたはずなのに、気付いたら炎に包まれた建物の中にいて…。人と会う約束をしていたんです。今は何時ですか?」
とりあえず疑問を解消してこの場を去ろうと再度質問をぶつけた。
「貴様、何を訳の分からん事を言っている。先ほど俺と貴様がいた場所は本能寺でここは京だ。だいたい、おかしな格好をしているのは貴様の方であろう?
貴様、何奴だ?」
相変わらず偉そうな口調で語る信長様の言葉の方がよっぽど訳が分からない。
さっきいた場所が本能寺で、そこが燃えてて、織田信長がいて…
それってまるで本能寺の変?!