第8章 時を越えて〜出陣準備〜
夜更けまで続いた軍議も無事に終わり、春日山の面々は明け方には安土を出立し春日山へと戻って行った。
ーーーそして
準備でバタバタと時間は過ぎて行き、気が付けば出立の朝。
袴姿で城門へと姿を現した舞は、武将たちに囲まれていた。
「舞、道中はくれぐれも気を付けるんだぞ。知らない人には付いて行くなよ。春日山に着いたら文を送ってくれ。春日山ではーーー」
「秀吉、そのくらいにしておけ。」
心配のあまり、舞に細々と注意事項を述べる秀吉に信長がストップをかける。
「信長様もどうぞご無事で。金平糖はほどほどになさってください。」
「ああ。では、参るか。」
「「はっ」」
「秀吉さん、心配してくれてありがとう。春日山に着いたら文書くからね。それじゃ、行って来ます!」
舞はそう言うと、馬に跨がり政宗と三成に挟まれて信長に続いて出立する。
光秀と家康は先に越前へと立っていた。
舞たちは馬で移動して先に岐阜城入りし、歩でやって来る兵たちは後で合流することになっている。
「信長様、ご武運を!舞、気を付けてな!」
秀吉が大きな声で手を振りながら見送ってくれた。
安土から岐阜城までは、馬で駆ければ1日かからずに到着するが、その距離でも馬で旅などしたことのない現代人の舞にとっては過酷だろう事を考え、途中宿に泊まりゆっくり進む。
そうは言っても、戦国時代に来て初めての遠出に
(今さらだけど、大丈夫かな?迷惑かけないようにしなきゃ)
急に不安に襲われた舞に
「舞様、どうかご無理はなさらず、具合が悪くなったり疲れたりしたらすぐにおっしゃってくださいね。」
と三成が穏やかに声を掛ける。
その優しさに
「三成くん、ありがとう。こんな旅は初めてだから不安だけど、みんなに迷惑をかけないように気を付けるね。」
と素直に答える。そんな舞に
「迷惑をかけないようになどと思う必要はありません。行程には余裕があります。休憩を挟みながら無理をせず進みましょう。」
と三成はエンジェルスマイルで答えた。
横で政宗も肯いている。
日暮れには歩を止めて、宿に入る。
4人で夕餉を摂った後、湯浴みして体の疲れを癒した舞は布団に入るとあっという間に眠りに落ちて行った。
しばらくした頃
「…いや…やめて…お父さん…お母さん…逃げて…」
隣の舞の部屋から苦しそうな声が聞こえて来た。