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《イケメン戦国》時を越えて

第8章 時を越えて〜出陣準備〜


一方、広間では顕如討伐を確実に成すための細かい戦略が話し合われていた。
そこへーーー
「失礼します。」
舞がやって来た。

「舞?!まだ起きてたのか?どうした?」
驚いた秀吉が声を掛ける。
「お話中にごめんなさい。みなさんに渡したいものがあって…」
勢いでやって来たものの、邪魔をしたかと話す声が去りすぼみになる。

「なんだ。」
信長から声を掛けられ
「あの!これを渡したくて。」
思い切って告げ、ものを見せる。
「武運の御守りです!」

「ほう。貴様が作ったのか?」
御守りを見た信長が口角を上げる。
「はいっ。ええと、これが信長様のです。」
そう言って渡されたのは、黒い生地に紅い目の小さな熊の人形。
胴体には織田家の家紋が刺繍されている。
「御守りくまたんを作りました。」
そう言いながらはにかむ舞。舞の優しい心遣いが伝わって来る。
「良くできているな。礼を言う。」
信長は素直にそう言った。

「これは、秀吉さん。」
「俺にもあるのか?!」
「うん。みんなに作ったから。」
「良くできてるなー。ありがとな。」
秀吉は心から嬉しそうに笑って舞の頭をよしよしと撫でた。

他の織田軍の武将たちへも御守りを渡した舞は、謙信たちの元へとやって来た。
「みなさんへも作ったので、良かったら受け取ってください。」
それを聞いて驚いた春日山の面々。
「俺たちにも作ってくれたのか?」
信玄が聞くと
「はい!信玄様たちも無事でいて欲しいので。」
皆、心を鷲掴みにされた。

「佐助くんは家紋が分からなかったから、代わりに忍びらしく手裏剣を刺繍したの。」
「ーーっ!」
そう言って渡された御守りくまたんは緑色で眼鏡もかけている。
「嬉しいよ、舞さん。本当にありがとう。俺は今、猛烈に感激している。」
と言う佐助は相変わらず無表情だが、その嬉しさは声ににじみ出ていた。

「しかし、本当に良くできてるな。家紋の刺繍まで…大変だったろ?」
幸村が問うと
「ううん。そうでもないよ。刺繍は小さなものだし、くまたんはみんな同じ形だから。」
「織田軍はともかく、俺たちの家紋はどうやって調べたんだ?」
「女中さんにお願いしたら調べてくれたの。」
「へえ。」

その後も口々に礼を言う武将たちに笑顔で答えると
「では、私はこれで。おやすみなさい。」
と舞は部屋を後にした。

去った後には温かい空気が流れていた。
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