第7章 時を越えて〜顔合わせ〜
「全員終わったようだな。では、このまま軍議に移る。」
信長が告げると
「待て。」
謙信がそれを遮った。
「なんだ。」
信長に答えることなく舞を見据えると
「お前が言っていた『ホトトギス』の句はなんの意味があったのだ?」
と聞いてきた。
「あっ、あれは、えーと…」
舞が返答に窮していると
「俺たちの時代では、信長公、秀吉公、家康公に関する有名な句があって、信長公は『鳴かぬなら殺してしまえホトトギス』、秀吉公は『鳴かぬなら鳴かしてみせようホトトギス』、家康公は『鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス』と3人の性格を表現しているんです。舞さんはそれに倣って武将の皆さんの性格を表現したんだと思います。」
「そっ、そういうことです。佐助くん、ありがとう。」
「いや、大したことじゃない。」
「……佐助、斬る!」
「えっ?なんで?!」
突然、佐助に斬りかかろうとする謙信に驚く舞。
当の佐助は涼しい顔で
「舞さん、大丈夫だ。『斬る』は謙信様の挨拶のようなものだから。」
「ええっ?『斬る』が挨拶??そんな物騒な…」
「本気で斬る訳じゃない心配しないで。ただ、ちょっと…いや、かなり疲れるだけで。」
「…謙信様」
「なんだ?」
「佐助くんは私を助けてくれただけなのに、斬ろうとしないでください!」
「……女。では、お前が代わりに斬られろ。」
「えっ?何言って…」
「覚悟がないなら口を挟むな。」
「………分かりました。」
謙信を睨みつけ、そう答えた舞に
「えっ?舞さん?!」
「はっ?なに言ってんだお前!」
「天女?!謙信、女人相手にムキになるな。」
春日山の面々は驚きを口にする。
それを無視して
「よかろう。望み通り斬ってくれる。」
「望むところですっ!」
ヒートアップして行く二人。
オロオロする春日山勢に対し、織田軍は涼しい顔。
「なんでお前ら止めねーんだよ!」
幸村が噛み付くも
「まあ、黙って見てろ。」
と政宗に宥められた。
「舞、謙信。やり合うなら鍛錬場へ行け。」
信長の一声で二人は鍛錬場へと向かって行く。
「はあ?一体、どうなってんだ?」
訳の分からない春日山組と全く動じない織田軍の面々もその後を付いて行った。