第6章 時を越えて〜現代人トモダチ〜
「話を戻して良いかな?」
「あっ、うん。もちろん。」
「実は君に謝らなきゃならない事がある。」
「えっ?なんで佐助くんが私に謝るの?」
「それを説明すると少し長くなるんだけど…。俺は現代でタイムホールの研究をする大学院生だった。」
「タイムホール??」
「うん。簡単に言えば、タイムスリップするための時空の入り口みたいなものかな。」
「時空の入り口…」
「そう。タイムスリップなんて現代でもお伽話みたいなものだって思われてるけど、俺は宇宙物理学を学ぶうちにタイムホールの存在を発見して、ずっとそれを研究していたんだ。そして様々な計算式を組み合わせることで、タイムホールの発生する日時と場所を特定できるまでになった。」
「そっ、それは…すっ、すごいね!」
「まあ、ただの研究バカってだけだけど。」
「研究バカって…そこまでできるなんて、バカじゃなくて天才でしょ?ノーベル賞ものだよ!」
「まあ、そうかもしれないけど…それは置いといて。タイムホールの日時と場所を特定した俺は、本当にタイムスリップが可能なのかどうかを実験するために、あの日、本能寺跡地を訪れた。」
「そうなの?」
「うん。そこからは君も知っての通り、俺の計算通りにタイムホールが現れてタイムスリップ現象を引き起こした。本当なら俺一人でタイムスリップする予定だったのに、君の存在に気付くのか遅れて…。結果、君を巻き込んでしまった。違う世に飛ばされたなんて、君の人生を左右する大事態だ。謝っても謝り切れないけど、本当にごめん。」
深々と頭を下げる佐助。
「ええっ?今の話に佐助くんが謝るところなんてあった?タイムホールが現れるタイミングに私がたまたま本能寺にいた結果が今回のタイムスリップでしょ?佐助くんがタイムホールを発生させた訳でもないし、私に謝ったり自分を責めるのは違うと思う!だからもう、謝るのも気に病むのもやめて欲しい。この話はこれでおしまい!」
そう言い切った舞を見る佐助の瞳は心なしか潤んでいる。
「……舞さん、ありがとう。そう言ってもらえて救われたよ。」
四年間背負い続けた十字架から解放された佐助は、スッキリした表情を浮かべていた。