第6章 時を越えて〜現代人トモダチ〜
〜佐助目線②〜
「突然、訪ねて来て申し訳ない。改めて…俺の名は猿飛佐助。君の名前を聞いてもいいかな?」
「あっ、私は水崎…舞です。……佐助くん、私のために危険を犯して会いに来てくれてありがとう。」
この緊迫した状況に身も笑顔も固くした舞さん。
「この四年間、君をずっと探していたから…。会えて良かったよ。」
「えっ?四年間??」
「うん。俺は四年前に上杉軍が戦う戦場にタイムスリップして、そこで謙信様を助けた。それからずっと謙信様の元でお世話になっているんだ。君は?最初から安土に?」
「四年間…佐助くんはそんなに長い間、この時代で頑張って来たんだね…。現代とは全く違う世で四年間も…。忍びにまでなって…すごいね。」
そう言うと彼女は涙ぐんだ。
「私は1週間ほど前にこの時代の本能寺に飛ばされて信長様を助けたの。その縁でここに居候させてもらってる。」
「そうだったのか。とにかく無事で良かった。ここにいられるなら安心だ。でも、あれ?一週間ほど前で本能寺ってことは…『本能寺の変』か。」
「うん。実はそうなの。でも、史実とは違ってた。」
「そうか…。でも、本能寺の変だけじゃない。謙信様と信玄様が生きている時点で史実とは異なるからね。もしかしたら、俺たちが来たこの時代は、俺たちの知る史実とは異なる、所謂パラレルワールドなのかもしれない。」
「パラレルワールド…。そうか!そうなのかも?!」
「うん。そう考えると納得が行く事が多々ある。例えば、俺の横に座ってる真田幸村だけど、史実では幸村の主君は豊臣秀吉公とされている。」
「「はっ?」」
幸村と恐らく豊臣秀吉だろう二人の驚きの声が聞こえる。
「史実では織田軍にいたはずの幸村の主君が信玄様って時点で俺たちの知る歴史とは全く違っているんだ。」
「佐助くんの話だと敵と味方が全く逆だね。」
「うん。まあ、これはほんの一部だけど、今この時の幸村の主君は信玄様だから、この世界ではそれが正解なんだと思う。だから、史実では死んでいるはずの人たちが生きているのも、この世界では正確なんだよ、きっと。」
「なるほど!そっかー。佐助くんの話を聞いたらなんだかスッキリした!」
固い表情が和らぎ、ニコニコと微笑む舞。
「ふっ、それは良かった。」
無表情が常の佐助の顔も綻びた。