第6章 時を越えて〜現代人トモダチ〜
〜佐助目線〜
連れて行かれたのは、安土城内の広間だった。人払いがされたのか、室内には織田軍の武将たちと姫君、俺と幸村だけだ。
姫君と武将たちの先ほどのやり取りを見た限り、武将たちは彼女の置かれた状況を知っていて受け入れているようだ。
広間の真ん中に座らされた俺と幸村。
目の前には織田信長と姫君、左右に武将たちが並んでいる。
「して、貴様。舞の同郷者であるとは誠か?」
威圧感たっぷりに信長が口を開く。
「お互いに詳しく確認した訳ではないですが、十中八九、俺と彼女は同じ時に500年後の世からこの乱世へ飛ばされました。」
「ほう。貴様、名はなんと申す。」
最初で最大の難関に冷や汗が背中を伝うが、後々のためにこの場を嘘や誤魔化しでやり過ごすのは得策ではないと判断し、事実を思い切って告げることにした。
「俺の名は『猿飛佐助』。主君は上杉謙信様。軒猿に属しています。そして、隣にいるのは武田信玄様に仕えている『真田幸村』。」
「なにっ?!越後の龍も甲斐の虎も生きているのか?!」
「軒猿って上杉の忍びじゃないか!」
「真田幸村…上等じゃねえか。二人まとめて斬って捨ててやる!」
口々に言い、怒りを露わにして抜刀する武将たち。
予想通りの展開とは言え、死の恐怖が襲い来る。
「貴様ら、黙れ。」
信長の鋭い一声で一斉に黙り大人しくなる武将たち。さすが魔王だ。
「おい、佐助。貴様はなぜ今、己らの身の上を話した?」
目だけで殺されるんじゃないかってくらいの殺気を纏った信長に飲まれそうになるのを必死に耐え、言葉を返す。
「今日俺がここに来たのは彼女と話をするためで、幸村が付いて来たのは俺が一人でに行くのを心配したから。刀を交える気はない意思を分かってもらうためには、嘘や誤魔化しなどせずに誠意を示すしかないと判断しました。」
「貴様、斬られる覚悟はできておるのか?」
「はい。でも、その前に彼女と話をさせてください。俺が死んでしまえば、彼女はここへ飛ばされた理由も帰る方法も永久に分からず仕舞いになってしまいます。彼女のために、どうかお願いします。」
そう言って深々と頭を下げた。
「…そこまで言うのなら、話が終わるまで斬るのは待ってやる。貴様らも手を出すな!」
「「「「「はっ」」」」」
とりあえず、話しができる事に安堵した俺は、フーッと一呼吸ついて彼女へと視線を移した。