第6章 時を越えて〜現代人トモダチ〜
〜佐助目線②〜
興奮して焦っていた俺は俺らしくもない行動に出る。
演奏を終えて、武将たちに囲まれて安土城へと引き返す彼女に
「あのっ!」
と思わず声を掛けてしまった。
そんな自分の無鉄砲な行動に気付いた時には既に遅く、
「なんだ、お前は。」
と彼女へと辿り着く前に武将たちに睨まれる羽目になる。
こうなってはしょうがない。腹を括ろう。
「突然申し訳ありません。彼女……姫様にどうしてもお話したいことがありまして声を掛けました。」
と告げるが、当然ながら
「何者だ?姫に何の用だ!」
と凄まれ刀を突きつけられて、足止めをくらう。
その状況に
(出直すしかないか)
と諦めて断りの言葉を告げようとした、その時。
「あれ?あなたは……。」
姫君が発した言葉に反応した武将が
「知り合いか?」
と振り返り尋ねる。
「知り合いって言うか…どこかで見た気がするんだけど…。うーん。どこだったかなぁ?」
と考え込む姫に
「…本能寺…」
と短く告げると
「!!あっ!ああ!あの時の!!」
目と口を大きく開いて、俺を指差して彼女は叫んだ。
良かった。彼女も覚えていてくれたようだ。
ホッと息を吐く俺に、武将を押し除けて駆け寄って来た彼女は
「…もしかして…あなたもあの時?」
そう聞いてきた。
瞬時に肯く俺を見た彼女は、側にいた武将に何やら耳打ちする。
「なんだって?それは本当なのか?!」
彼女がコクリと肯くとその武将はすぐさま、恐らく織田信長であろう人物の元へ走り片膝をついて報告し始めた。
「申し上げます。舞の話によれば、あの者は舞の同郷者とのことですが、いかがいたしましょう?」
「同郷者…なるほど。他にもおったか。」
信長は、ニヤリと笑うと
「貴様も付いて来い。」
俺の方を向いて一言告げると歩き出した。
思わぬ展開に一瞬躊躇するも、これを逃せば次はいつチャンスがあるか分からないと、大人しく付いて行く事を選択し、最後尾で一歩踏み出そうとした時
「待ってくれ!」
後ろから声がかかる。振り向けば
「…幸」
そう幸村がいた。
「お前一人で行かせる訳にはいかねぇ。俺も一緒に行く。」
有無を言わせない雰囲気で言う幸村に戸惑っていると、
「ふんっ。忙しないことだな。まあ良い。来たいなら来るがいい。」
と信長が答え、あっさりと幸村も同行することになった。