第5章 時を越えて〜適正試験〜
〜三成目線〜
本日の舞様のご活躍、驚きと感嘆の連続でございました。
見目麗しく、多芸多才、気立て良し。
こんなに素晴らしい女性に会ったのは初めてで、感心するばかり。
舞様を見ると、常に心の臓がドクドクと早鐘を打っているのはなぜなのでしょうか?
政宗様や家康様と仲良く戯れていらっしゃるのを見ると、心の臓がチクリと痛む気がするのはなぜなのでしょうか?
きっと500年後の世から来られた舞様が心配でしょうがないと思う心の現れなのでしょう。
矢馳せ馬、剣術、茶道、華道を素晴らしい内容で披露された舞様は、昼餉の後には書道に挑まれたのですが、
「うーん、崩し文字って慣れないから難しい。」
ここに来て、初めて二の足を踏まれた舞様。
確かに下手ではないが、上手くもない。
今までの出来を見て来た我々もこの結果に拍子抜けいたしました。
でも、そこはさすが舞様
「あのっ、大きな筆と紙ってありますか?」
皆が不思議がる中、畳一畳近くありそうな大きな和紙に書を始め…。襷掛けと袴姿で大きな紙を跨いで豪快に文字を描いて行く。そうして書かれたのは
『君子は人の美を成して、人の悪を成さず。』
「孔子の論語ですか…。」
私がポツリと漏らすと
「さすが三成くん!『君子とは、人の成功を願い、困っている人に手を差し伸べられる者のことです』って意味なんだけど、私もこういう人間でありたいなあっていつも思ってるから、それを書いてみたの。現世だろうと500年後だろうと、人と人との関わり方は変わらないからね。」
「はい。私も好きな言葉ですよ。」
そう答えれは、舞様は嬉しそうに笑った。
崩し文字とは一味違った豪快なようで繊細な美しい文字は、正に舞様のよう。
「お前は崩し文字より、こっちのが合ってるみたいだな。良く書けてる。」
政宗様が言えば、
「だね。ありがとう。」
と答えた舞様。
「んー、でもこの時代にいるなら崩し文字の読み書きを勉強した方が良いよね?」
と言われるので
「私で良ければ読み書きをお教えしますよ。」
とお伝えすれば
「本当?!三成くんありがとう!ぜひよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げられた。
決して奢らず、謙虚で勤勉な姿は本当に好感が持てます。
あー、やっぱり舞様は素晴らしいです!