第5章 時を越えて〜適正試験〜
〜政宗目線②〜
「ふーん。でも、政宗さんに負けたのが久しぶりってことは、500年後の世では男相手でも勝ってたってことでしょ?」
家康が再び問い掛ける。
「ふふっ。まあ、そうだね。通ってた道場の門下生を制覇して師匠にも勝っちゃったらつまんなくなってね…。その道場を辞めて、その後はより強い相手を求めて道場破りみたいに色んなところを渡り歩いたんだ。『たのもー!』って。ここに来る前に通ってたところも後1人で制覇だったんだけど、途中で終わっちゃったな…。」
「……それは…残念だったね。」
「お前がしたいなら、いつでも相手するぞ?」
「そうだね。ありがとう。でもね、今日、政宗に負けてスッキリしたからもういいかな。勝ち続ける事に拘ってた訳じゃないけど、負けるもんか!って意地になってたところもあって…。政宗には素直に『敵わない』って思えたから、もうそれで満足。そう考えると今まで『敵わない』って思う人に会えなかったから、余計に意地になってたのかもしれないね。」
そう言って楽しそうに笑う舞は本当にスッキリした顔をしていた。
「矢馳せ馬は?いつからやってんだ?」
(あの超人的な技術はどうやって身につけたんだ?)
「あー、あれはね。元々は私の父が矢馳せ馬の名手で、子どもの頃から練習する父にくっついてやってたら自然とできるようになってたの。中学生…ええと、14歳頃からは毎朝のルーティンとしてやってたから。」
「「るーてぃん??」」
「えーと、習慣みたいなものかな?毎朝、剣道の素振りと矢馳せ馬をしてジョギング…長距離走?走る?のが日課だったから。」
「毎朝?」
「うん。毎日やってるとね、目瞑ってても当てられるようになって、そうなるとつまんないから『2本一気に射ってみたらどうかな?』ってやってみたけど、一年間くらいは全然できなかったよ。それでも諦めずにやってたら、そのうちできるようになってた。色々あってこの半年くらいは休んでたけど…今日は上手く行って良かった!ちなみに、3本打ちも挑戦したけど、手が小さいから3本は持てなくて諦めちゃった。」
舌をペロッと出して悪戯っ子みたいに笑う舞。
(本当、何なんだコイツは!可愛いなんてもんじゃねえ!)
気になってしょうがないし、もっとコイツを知りたいと思う。
あー、ヤバいな。捕まっちまった。
無駄な抵抗は辞めて、己の心に正直にはなるしかなさそうだ。