第5章 時を越えて〜適正試験〜
〜政宗目線〜
『矢馳せ馬』、『剣術』を終えた舞は湯浴みして着替えた後に広間へとやって来た。
しかし、舞の剣術の腕前には正直、恐れ入った。女であれだけの剣捌きができるヤツなんて早々いねえ。(一体どんな風に剣術を身に着けたんだ?)
気になった俺は舞にその疑問を問い掛けた。
「舞、お前はどうやって剣術を身に着けたんだ?」
「あっ、政宗。さっきはお相手してもらってありがとうね。久しぶりに楽しい打ち合いだったよ。」
「ああ、久しぶりに骨のあるヤツと打ち合えて俺も楽しかった。」
「ふふっ、それは良かった。
えーと、『剣術をどうやって身に着けたか?』だよね?」
「ああ。」
「うーんと、細かく言えば私が学んだのは剣術って言うか、『剣道』なの。」
「剣道?」
「うん。今の時代よりずっと後に広まった剣術でね、刀じゃなくて『竹刀』って言う竹で作られた長い棒みたいなものを打ち合うの。体に甲冑みたいなものを着けて、頭には首まで全体を覆う防具を着けて打ち合うから、打たれても痛みは少ないし、怪我もしにくいんだよ?500年後の世は戦とかないから、戦うためじゃなく武芸の一種として習得するの。礼儀作法も身に付くし精神面も鍛えられるから、うーん、今で言うと手習のようなものかな。私は子どもの頃からその剣道の道場に通って教えてもらって習得したんだよ。」
「へーえ。戦うためじゃないのに、剣術を学ぶのか。」
「うん。500年後の世は平和だからねー。男も女もなく、みんな自由にやりたい事を学べるから。」
そう言ってにっこり笑う舞を見てると、500年後は本当に平和な世なんだろうと素直に思えた。
「あんたさっき『久々に負けた』って言ってたけど?」
今まで横で大人しく話を聞いていた家康が、会話に入って来る。
「ああ、それはねー。こう見えて、私結構強くてね?どのくらいかって言うと……剣道にはその…強さによって階級があるんだけど、その一番上の強さまで行ったの。一番上の階級って言うのが、弟子を取れるくらいの強さで…うーんと、織田軍で言えば信長様くらい?」
「「はっ?」」
「信長様って…それって相当な強さじゃないか!」
「えー、うん、まあ…織田軍で例えて言うならだから、実際の実力は信長様の足元にも及ばないよ。政宗にだって敵わなかったでしょ?」