第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
それから安土に戻った二人は挨拶をするために城へと出向いた。城門をくぐると
「光秀さん!」
遠方へ出掛けていたはずの光秀が出迎える。
「どうしてここに?」
驚いて聞く舞に
「ここで大事な用があってな。」
「そうだったんですね。」
光秀が答えると納得したように舞が肯いた。
「戻って早々悪いが、お前にも付き合ってもらう。」
「えっ?」
「はっ?」
「秀吉、舞は連れて行くぞ。」
「みっ、光秀さん?!」
「光秀?おい!どこ行くんだ!」
驚く舞と秀吉を他所に、舞の手を引いてさっさと歩き出す光秀。追いかけようとした秀吉だったが
「秀吉様、お帰りなさいませ。信長様がお呼びでございます。」
そう三成に言われ
「ああ」
と光秀たちとは違う方向に歩き出した。
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光秀に連れられて歩く舞が
「光秀さん!どうしたんですか?」
と聞くが
「案ずるな。黙って付いて来い。」
そう返って来る。訳が分からず戸惑う舞だったが、これ以上尋ねても光秀は答えないだろうと判断し、大人しく手を引かれて歩いた。そして
「ここは…」
辿り着いた先は、舞の部屋。
「入れ」
襖を開けた光秀にそう促されて中に入った舞は
「ーーーっ!!!」
言葉を失くした。
一方、三成とともに信長の待つ広間へと向かった秀吉は
「失礼します。秀吉様がお戻りになられました。」
そう言って先に入った三成に続き
「ただいま戻りました。」
自分も入室する。
「猿、戻ったか。」
そう声を掛ける信長の御前に進み
「無事に舞を連れて戻りました。」
叩頭して報告する。
「そうか。…秀吉。」
「はい」
「貴様に客人だ。」
「えっ?」
信長がそう言いながら、鉄扇で示す先には平伏する一人の男。顔が見えず誰だか分からない秀吉が
「誰だ?」
そう呟くと
「頭を上げよ。」
信長が男に言う。
それを受けて顔を上げ、秀吉を見た男…それは
「ーーーっ…兄貴…」
母の死とともに生き別れた秀吉の兄だった。