第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
何度も求められ意識を飛ばし、そのまま眠りについた舞を秀吉は腕に抱いてその柔らかい髪を撫でていた。
「地獄の底から一気に天国に登った気分だな。」
そう言って苦笑いする秀吉の顔は幸せに満ちている。
「もう一度お前をこの腕に抱けるなんて思ってなかった。ずっと想っててくれてありがとな。…愛してる。」
舞の顔を愛おしそうに見つめてそう言うと、額に口付けを落とし自身も目を閉じた。
ーーー翌朝。
「…んっ」
舞が目を覚ますと
「起きたか?」
声の方へ顔を向ければ、穏やかに微笑む秀吉の姿。
「あっ…」
そう言って真っ赤になる舞に
「おはよう。体は大丈夫か?」
優しく問いかける秀吉。
「うっ、うん…」
舞はそう返すのが精一杯だった。
昨夜の情事を思い出せば、どうしようもない羞恥に包まれる。でも同時に、秀吉の腕に抱かれて朝を迎えたという、言葉では言い表せないほどの幸福に満たされていた。これからはずっとこんな風に一日の始まりを迎えられる。そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。
「幸せだな。」
そんな舞の気持ちを察したのか、秀吉が口にすると
「うん。すごく幸せ。」
舞もますます笑みを深くした。
「そろそろ起きるか。」
そう言って着物を着ようとする秀吉を
「ちょっと待って!」
舞が止める。
「ん?どうした?」
不思議そうにする秀吉に
「少しだけ待っててくれる?」
舞はそう告げると、急いで寝着を着て隣の部屋へと行ってしまった。
「なんなんだ?」
訳の分からない秀吉が呟いたその時
「お待たせしました。」
何かを抱えた舞が戻って来た。
「秀吉さん…これ…」
そう言って舞が差し出したのは
「…着物か?」
綺麗に折り畳まれた何着もの着物だった。
「うん。…秀吉さんに作ったの。」
「これ全部か?」
「…うん。……渡せないって分かってたけど、着物を縫ってる間は秀吉さんが側にいるみたいでーーっ」
言葉を聞き終える前に、秀吉が舞を掻き抱く。
「……」
「秀吉さん?」
抱きしめたまま何も言わない秀吉を舞が呼べば
「……ありがとな…こんなに…想ってくれてありがとう。」
声を詰まらせながら秀吉が言う。
「…舞、愛してる。心から愛してる。」
そう言って強く抱きしめた後に
「最高に幸せだ。」
体を離し、舞の目を見て本当に幸せそうに破顔する。すると釣られたように
「私も渡せて嬉しい。喜んでもらえて幸せ。」
舞も微笑んだ。