第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
「舞…ありがとな。二人で幸せになろうな。」
秀吉は舞の言葉に嬉しそうにそう答えると、誓うように口付けた。
額と額を合わせて笑い合う二人。
幸せな空気が天幕を包む。
そこに
「秀吉様、三成でございます。」
三成が訪ねて来た。
慌てて体を離し、舞は起き上がって髪と着衣の乱れを整える。舞の準備が終わったところで
「入っていいぞ。」
秀吉がそう声を掛けた。
「失礼いたします。」
そう言って入って来た三成は
「秀吉様、申し訳ございませんでした。」
秀吉の足元で土下座して詫びる。面食らった秀吉が
「三成っ?!いきなりどうした?」
そう聞くと
「私は…秀吉様をお守りできませんでした。」
今にも泣き出しそうな顔で答える三成。そんな三成に
「お前は大丈夫か?怪我したりしなかったか?」
秀吉が優しく問う。
「…はい。私はなんともございません。」
三成が答えると
「そうか。良かった。」
秀吉は嬉しそうに微笑んだ。それを見た三成は
「…秀吉様」
溢れ落ちそうな涙を必死に耐え
「大事な秀吉様のお命を危険に晒しておきながら、私のような者が無事でいるなど…命を以って償う所在です。」
そう言葉を発する。
「三成くん、駄目だよ!」
堪らず舞が口を挟んだ。
「確かに秀吉さんの命は大事。でも、三成くんの命だって同じくらい大事だよ?主君と家臣でも命の重さは同じなの。命の重さに差なんかない。だからそんなこと言わないで。」
「…舞様…」
「命の重さはみんな平等だよ?そしてみんな同じ大事な命なの。自分のものだろうとその大事な命を簡単に奪うようなことはしないで!生きたくても生きられなかった人もいるのに、生きられる命を簡単に絶とうとしないで!!」
「…」
最後は涙混じりでそう叫んだ舞の背中を秀吉が撫でる。
「三成。俺たちは大事な人を守れる世を作るために必死で戦ってる。その俺たちが簡単に命を絶ったら、誰が『太平の世』を作るんだ?俺はこれから先も大望が叶う日まで戦い続ける。お前にはずっと俺の右腕として共にいてもらわないと困るんだ。」
「秀吉様…」
「お前には俺と一緒にこれからも戦い続けて欲しい。そして、大望が叶った暁には身分や血なんか関係なく、お前にも自由に生きて欲しい。」
「…有難きお言葉」
床に額を擦り付けて三成が言うと
「命の重さも血の色もみんな同じなの。秀吉さんも三成くんもそれを忘れないで?」