第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
〜舞目線⑥〜
秀吉さんが死の淵を彷徨った原因は、射られた矢に塗ってあった毒で、即効性のその毒は体内に入れば数分のうちに死に至らしめるものだった。家康からそう説明を受けた時は、永遠に秀吉さんを失っていたかもしれないと怖くて体がガタガタ震えた。家康は
「秀吉さんが助かったのはあんたのおかげ。あんたが秀吉さんを救ったんだ。」
説明の最後にそう言った。自分が命を救っただなんておこがましいと思うけど、でも、秀吉さんの命の灯が消えなかったことが何より嬉しかった。
家康が出て行った天幕で秀吉さんと二人きりになる。命の危機は脱したもののまだ解毒が完全に終わってない体は高熱を発していた。
「はあ、はあ」
苦しそうに息をする秀吉さん。置いてもすぐにぬるくなる手拭いを何度も濡らし、額や首筋を冷やしながら付き添い続けた。秀吉さんの熱い手を握って
「秀吉さん、ずっと側にいるよ。」
何度も声を掛ける。荒い息で渇く秀吉さんの口内に口に含んだ水を何度も流し込んだ。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
「どう?」
家康が再び顔を出し、秀吉さんを診る。
「さっきより熱が下がってる。このまま下がって行けば大丈夫。」
そう言って
「四半刻後にこれを飲ませて。」
と解毒薬を置いて行った。家康と入れ替わるように
「秀吉の様子は?」
そう言って入って来たのは
「光秀さん、政宗も…戦は?」
光秀さんと政宗だった。
「ああ。日が暮れたから朝まで休戦だ。で、どうなんだ?」
政宗が心配そうに聞く。
「うん。熱が下がって来てるし大丈夫だって。」
「そうか…」
「良かった…」
二人ともホッとしたように息を吐く。少しの間、秀吉さんの顔を見ていた二人は
「お前も無理するなよ。」
そう言って出て行った。
「もう夜だったのか…」
ポツリとひとり言を漏らし、秀吉さんの口に解毒薬を口移しで少しずつ流し込む。
ゴクリッーー
飲み込む音に安堵してホッと息を吐くと、汗でびっしょりになった秀吉さんの額や胸元に気付き手拭いで拭い
「ずいぶん熱が下がったね。良かった。」
声を掛けながら顔や首筋の汗も拭く。
「秀吉さん、愛してるよ。」
そう言って、頬と唇に口付けを落とした。
「んっ…」
「秀吉さん?!」
「…ま…い」
「秀吉さん!」
意識が浮上しつつある秀吉さんに何度も呼びかける。そして
「ん?ここは…」
秀吉さんが目を開けた。