第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
〜舞目線③〜
坂本城へ移ってからは、何もせずただボーっと過ごした。少しでも秀吉さんを思い出すと、涙が溢れて止まらなかった。そんな私を光秀さんもお城の人たちも何も言わずにただ見守ってくれている。それがとてもありがたかった。
そんな日々を過ごすうちに心はだんだん穏やかになって行き
(ここで密かに秀吉さんを想って生きて行こう)
そう思えるようになった。そうして日常を取り戻した私は、あることを始めた。一生渡せないけれど、ひと針ひと針秀吉さんを想って着物を縫った。秀吉さんが好きな薄緑色の着物。それを縫うだけで、秀吉さんを近くに感じられて嬉しかった。着物が終われば、羽織りを縫った。そうして気付けば、何着もの着物が出来上がっていた。
「毛利討伐に出る前に」
そう言って帰って来た光秀さんは、出来上がった着物の山に複雑な顔をしていたけど
「着物が縫えるほど元気になったなら安心だな。」
と笑った。
「他の男ばかりじゃなく、たまには俺にも作れ。」
そう言われて、私も笑った。
そして光秀さんは
「今回の戦にはお前も連れて行く。」
と言い出した。
「えっ?」
驚く私に
「家康の助手をしてやってくれ。秀吉とは顔を合わせることはないから心配するな。」
そう言われて納得した私は、光秀さんの隊と一緒に戦場へと向かった。
戦場では言われていたように、看護の手伝いをする。次々に運ばれて来る怪我人を見様見真似で手当てしていたその時
ドカーンッーーー
ものすごい爆発音が鳴り響いた。
瞬時に辺りは騒然とし出す。
「本陣に大砲が撃ち込まれた!」
慌てて状況を説明しに来た兵の言葉に
「ーーっ!信長様!三成くん!」
そう叫んで駆け出した。
本陣にたどり着いた私の目に飛び込んで来たのは
「秀吉さん!!」
信長様を庇って矢面に立ち、倒れ込む秀吉さんの姿だった。