第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
〜舞目線〜
秀吉さんと恋仲になって幸せなはずなのに、少しずつ不安が募って行く。
秀吉さんはいつも私の姿を見付けても、声も掛けずに去って行く。私が誰かと話してるから気を遣ったのかな?最初はそう思ったけど、その相手が武将のみんなや光秀さんでも同じ。私の何かが気に障るのだろうか?そう思い気になるけど、二人でいる時の秀吉さんは今までと同じように優しいから、聞くに聞けなかった。
そして…。
秀吉さんと恋仲になって数ヶ月が経っても、秀吉さんは口付け以上のことをしようとはしなかった。私が『誰かと恋仲になるのは初めて』そう言ったから、気を遣ってくれてるのかもしれない。そう思い
「秀吉さんなら大丈夫」
と勇気を出して告げてみても
「焦らなくても良いだろ?」
と返されて、結局なにもなく終わった。
(やっぱり私を女として見れないのかな…)
不安はどんどん大きくなる。
(私と付き合ったことを後悔してるのかもしれない)
そう考えるようにもなった。
(後悔していても、光秀さんやみんなの手前、断りにくいのかもしれない)
そう思うと、怖くて泣きたくなった。
秀吉さんの側にいたい。だから、秀吉さんの前では明るく元気に振る舞って、たくさん笑った。私が笑うと秀吉さんも笑ってくれるから、そうすればまた私を好きになってくれるかもしれない。そう思い必死だった。
そして、あの日。
私は反物屋さんに用があって城下町へ来ていた。そこで偶然見掛けた秀吉さんに、声を掛けようとしてやめた。秀吉さんに大人っぽい綺麗な女の人が話しかけていたから。その人と二言三言、会話をした後、一緒にいた家臣の人と別れ、秀吉さんはその女性の手を引いて歩き出した。
目の前の光景に、体が固まって動かなくなる。しばらく立ち尽くしていたけど、どうしても気になって二人の後を追った私の耳に飛び込んで来たのは
「ーーー…そう言えばあんた、あのお姫様と寝たの?」
「…お前に関係ない。」
「ははっ、やっぱりね。そりゃあ簡単には手出せないよね。あのお姫様、あんたが夫婦になるつもりも子を成すつもりもないって知らないんでしょ?」
「……」
という二人の会話。
私は思わずその場から逃げ出した。
やっぱりそうだったんだ。秀吉さんは私との先なんて考えてない。
悲しくて苦しくて…。
部屋に戻った私は誰にも気付かれないように声を殺して泣いた。