第20章 時を越えて〜分岐〜秀吉ver. ※R18あり
〜秀吉目線②〜
ーーー翌日。
「毛利を制し『天下布武』を成し遂げる。大望が叶うまで、誰一人として命を落とすことは許さん。必ず生きて戻れ。」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
兵たちに向けた信長様の言葉。俺を見て仰っていたように思ったのは気のせいか。俺は別に死ぬ気はない。でも、死ぬ気で戦う。
「皆の者、参るぞ。いざっ!」
「「「「「「「おおーーーっ!!!」」」」」」
掛け声とともに一斉に駆け出す。最前線に立つ俺は、騎馬隊と一緒に誰よりも先に毛利軍へ突っ込んだ。
「はあっ!」
馬で駆けながら、敵兵を薙ぎ倒す。恐怖などなかった。ただ、前へ進むことだけを考えて飛んで来る矢を避けながら戦場を駆け回る。俺たちの隊が突破した後を他の者が続く。どこもかしこも壮絶な戦いが繰り広げられていた。
「豊臣秀吉か」
そう言って俺の前に現れたのは
「毛利輝元…」
元就の右腕とも謳われる人物だった。
「お互い、総大将の右腕として決着をつけようではないか。」
輝元の言葉に
「ああ。望むところだ。いざっ」
「豊臣、覚悟!」
輝元との一騎討ちが始まった。
カキーンーー
ガキンッーーー
「はっ!」
「はあ!まだまだ!」
お互い一歩も引かずに討ち合う。
さすがに元就の右腕だけあって強い。だが、俺も信長様の右腕と言われる男。絶対に負けるわけにはいかねえ。そう気合いを入れ直したその時
ドカーンッーーー
大きな爆発音が耳に届く。
「「ーーーっ!」」
俺も輝元も驚いて音の方を見る。
すると
「信長様!」
信長様がいる本陣に大砲が撃ち込まれていた。
「くそっ!」
直ぐに馬で駆け出す。
「豊臣!逃げるのか!」
輝元の声がしたが、そんな事はどうでも良い。
信長様の無事を確認するために、戦場を必死に駆けた。
「信長様!!」
たどり着いた本陣は火の手が上がり、騒然としていた。
「信長様!」
何度も名を呼び、信長様を探す。
「ーーっ!信長様!ご無事で!」
信長様の姿を見付け、大声で叫んだ俺に
「猿か」
いつもの調子で答える信長様。
「良かった」
俺はホッと息を吐いた。そして
「お怪我はーー」
そう確認しようとした時、信長様目掛けて飛んで来る矢が視界に映る。
「信長様!!」
信長様を押し除け、自分が矢面に立ったところで俺の意識は途切れた。